トワイライトエキスプレス廃止について思う事・・・
北陸新幹線金沢開業まであと一年を切り、私達が住んでいる石川県と富山県を中心にその熱気が満ち溢れ、今後の地域活性化や新たな問題点の模索に懸命になっている。ここ最近では、新幹線が開業する事で長野県が近くなるため、沿線自治体の観光やグルメ、文化等のPRや広告が非常に盛んだ。
その様な雰囲気の中、非常に嫌なニュースが飛び込んだ。それは「大阪と札幌とを、日本海縦貫線(北陸・信越・羽越・奥羽の各本線の総称)経由で結ぶ寝台特急のトワイライトエキスプレスが車両の老朽化のため、2015年3月のダイヤ改正を以てして廃止される。」であった。そのニュースを聞いた途端「1000㌔以上の長距離をゆっくりかつゆったりと、スローライフの感覚で走る列車が無くなってしまう。」、「カシオペアや北斗星と並ぶ、北海道行きの超人気特急を廃止してどうするんだい
!。せめて、車両や機関車を新造して欲しかったのに!
。」、「どうせ、廃止されるのであれば、北海道新幹線の新函館北斗の開業に併せて欲しかったのに!。北斗星もカシオペアも廃止されるのだから。」、「北海道新幹線は、札幌まで全面開業しないと意味がない。新函館北斗までの開業による本州~北海道間の寝台列車の廃止は、JR北海道の更なる悪化に輪を掛けてしまうだけ。これで墓穴を掘った。」と思い、思わず荒げた大声を出してしまう程であった。
トワイライトエキスプレス(以下「トワイライトEXP」と表記)が廃止されるニュースを聞いてからは、「何とかして残して欲しかったが、今のうちに撮影しよう!。」との思いが高くなり、金沢駅へ行く事にした。朝は「大阪行き」、昼は「札幌行き」の姿を撮影したり、見学したりする人たちで一杯で、鉄道マニアやそうでない方も関係無く「最後の姿を惜しもう」との思いにそれぞれが耽っていたのであろう。
話は変わり、トワイライトEXP誕生から廃止までの経緯を説明する事とする。誕生は1989年。青函トンネル開通と寝台特急北斗星(上野~札幌)誕生、寝台特急日本海の函館延長の翌年であった。使用する車両は24系25型の改造形式で、車体の色は今までの青色ではなく深緑色となり、食堂車とサロンカーは勿論連結されていて、個室寝台主体の編成となっている。誕生当時は「ブルートレイン」として長年親しまれ続けてきた青色から深緑色に変わり、重厚な欧風の室内空間、運行形式が毎日運行の定期ではないために「ただ長距離を移動する」から「車窓と車内を楽しみながら、永き時間を寛ぐ。」と言う、革新的なクルージングタイプの列車として、バブル期と相まって注目度も評判も非常に高かった。バブルが崩壊し、長年の不況や長距離夜行バスと新幹線及び航空路線の拡充と割引切符の多様多種化、JR同士の運行手続の複雑化や大都市圏の朝晩における列車ダイヤの複雑化と高速化によって、夜行列車の立場は年を追うごとに肩身は狭くなって行った環境の中でも日本の鉄道文化にしっかりと根付き、多くの人達から愛された。
2000年代に入ると、新造車両として90年代後半に登場した「カシオペア」(上野~札幌間)と「サンライズ瀬戸&出雲」(東京~高松・出雲市間)を除く、夜行列車の車両の本格的な老朽化、日本の経済における構造の変化や低迷、人口構造の少子高齢化、東京一極集中化、高速夜行バスの低価格化、旅行会社等のアイデアによる宿泊&飛行機又は新幹線や特急列車とのパックの拡充等が加わり、夜行列車の廃止どころか存在そのものも危ぶまれて行った。北海道夜行の場合は、青函トンネルの人気は昔ほど無くなってしまったのにも拘らず、本州との間には夜行バスが無いため、夜行列車の運行には打って付けの環境だ。しかし航空路線だけでなく長距離フェリーも充実しているため「早く行くのであれば飛行機。」で、「格安で行くのであれば長距離フェリーで。」と言う選択肢もあったため、その中間の夜行列車の人気は低迷し、日本海の函館発着便の廃止や全盛期には三往復もあった北斗星も、一日一往復となってしまった。やはりその様な環境にもかかわらず、トワイライトEXPとカシオペア、一日一往復となってしまった北斗星は、厳しい苦境に耐え抜いたのである。
鳴り物入りで誕生した北斗星とトワイライトEXPも、車体そのものの老朽化が著しくなり、乗車した事も無く偉そうな言動とはなってしまうが「北斗星とトワイライトEXPの客車とサービス、牽引機関車を新造して、カシオペアと共に北海道新幹線や北陸新幹線が開通したとしても絶対に残して欲しい!。」と思うようになって行った。しかし、現実は甘い訳が無かった。北陸新幹線の金沢開業により、金沢~直江津間の並行在来線が第三セクター化してIRいしかわ鉄道とあいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道に分割される。一方、東北北海道新幹線関連では、盛岡~青森間の並行在来線がIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道に分割済みで、青森~函館までの並行在来線については、青森県内はJR東日本、青函トンネルを含む津軽海峡線区間は北海道新幹線と在来線との共有してJR北海道、木古内~五稜郭間は第三セクター化(新会社の名称は未定)に、それぞれ分割されてしまい、青函トンネルを含む海峡線の架線電圧が新幹線にあわせて20kVから25kVに昇圧され、新幹線や専用機関車以外の運行が不可能となってしまう。その上、新型専用機関車がJR貨物のみの所有となるため、旅客車両の牽引も出来なくなってしまう事から、本州~北海道間の在来線旅客列車の全てが、2016年春の北海道新幹線新函館北斗開業を以てして、廃止されてしまう事となる。
これにより、現在でも運行されていて人気が高いサンライズ出雲&瀬戸を除いた長距離で都市間を結ぶ夜行列車が姿を消す事になってしまった。しかし、私個人の立場で思う事には、これも高い運行や車両維持のコストや出雲大社への参拝ブームの一段落化、何れかはやって来てしまう車両自体の老朽化・・・。等、それ自身にも不安の要素は非常に多いと感じてしまう。
しかし、その一方では、日本の鉄道から姿を消えてしまいそうな寝台列車に対する明るい話題もある。それは、JR九州によるななつ星in九州の登場である。それは、今をときめく形で人気は絶大で、途中下車による観光地への見学や車内だけではなく、名旅館にも宿泊が出来る九州島内周遊タイプのクルージングトレインで、世界中が注目している程だ。その様な形態の列車が、JR西日本とJR東日本で2016年以降に誕生する。専用機関車を持たない個室主体で周遊タイプのクルージングトレインではあるが、前者はハイブリッド式のディーゼル車、後者は電車と気動車との良いとこ取りが特徴のEDC(架線方式のディーゼル車)をそれぞれ採用する。更にJR東日本の新型クルージング車両が北陸地区にも来るとの噂や情報が入った事から尚更嬉しく感じて来る・・・。
また、青森県と岩手県が在来平行線運営会社の収入維持と鉄道活性化のため、カシオペアや北斗星の存続運動もあり、これもまた非常に嬉しい。この様な波が、北陸地区でも是非とも起こって、大阪~北陸~東北及び北海道間の寝台列車の存続や新規運行に繋がって行けたらと感じている。私個人としては、大阪~青森間に観光周遊とビジネスの需要を兼ね備え、格安志向から高級志向まで揃え、新青森で東北北海道両新幹線に接続する座席もある夜行寝台特急をJR西日本とJR東日本とで共同開発ないし共同運行する形で是非とも新設して欲しいと思っている・・・。その様な新型の寝台特急が、新幹線や飛行機の補完や高速交通機関(飛行機、夜行高速バス、新幹線等)の恩恵を受けない地域同士とを結ぶ役割を持つ形で。
私は、北海道へトワイライトEXPに是非とも乗って行きたいと思っているが、未だに乗車した事が無い。廃止はとても嫌な事だし非常に寂しい。
日本における新たな寝台列車いや高級観光列車文化の礎を四半世紀にもわたって築き上げただけに、感謝の意を挙げたい。本当にお疲れさまでした。2015年春まで、有終の美を飾る形で頑張って下さい・・・。
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